半導体用クロロシランのご相談は、専門家におまかせを
40年以上にわたる半導体材料の品質評価・分析・合成に関する豊富な経験を活かし、効率的で高精度かつ安全な分析・品質保証を提供します。
特にクロロシランやシリコン半導体分野における独自の技術と高度なソリューションで、企業の製造プロセスと品質管理を支援します。
筆者紹介
About the Author
Jao
化学系大学を卒業後、大手化学会社に就職し、半導体材料、電子材料、医薬品の品質評価、分析、品質管理、保証業務を18年間行いました。
その後は、半導体材料シリコンの合成、シリコンの物性研究、単結晶化技術の研究、製造を60歳まで行いました。
定年後は、シリコン半導体材料であるクロロシランの合成、半導体用シリコンの合成を専門に行う会社に再就職し、現在に至ります。
クロロシラン、シリコン半導体について製造、分析の経験が豊富であり、通常の評価、分析方法ではない、著しく効率の高い方法、安全が確保された方法、高精度が確保された方法、学術的に価値の高い方法、品質保証に適した方法などを現在も、確立しています。
技術紹介
Technical Expertise
シリコン半導体の基礎原料「クロロシラン」の評価・分析技術
シリコン半導体の基礎原料であるクロロシランに関する評価および分析技術についてご紹介します。
ここで扱うクロロシランには、以下の3種類があります。
ジクロロシラン(SiH₂Cl₂, DCS)
トリクロロシラン(SiHCl₃, TCS)
四塩化シリコン(SiCl₄, STC)
半導体材料ですので高純度であることが要求されるため、微量不純物を評価、分析する方法です。
不純物としては、製造工程にて混入する金属類、シリコンの半導体としての電気特性に多大な影響を与える、リンPの化合物、ボロンBの化合物、他にGCにて検出される不純物、有機物、溶存ガス等があります。
多種多岐に渡っていますが、再現性良く、定量出来る方法が望まれており、その濃度レベルは、ppt (一兆分の一が、1ppt)まで要求されています。
現在の高純度シリコンウエハの製造を支えているのは、基礎原料であるクロロシランが高純度であることに他なりません。
歴史的には、古くから、いわゆる湿式化学分析にて行われて来ましたが最近は、機器分析技術の発展が目覚ましく、ICP-MS、GC-MS、SIMS等により高感度化が図られています。
以下、順番にその概要を紹介します。
クロロシランの分析技術概要
1 GC
一般的に沸点が約300℃以下の有機物の分析、純度の測定に使用されます。
クロロシランの場合も同様に適用されますが、定量性、再現性、正確性に問題のない方法を確立するには、なかなか難しい面があります。
その理由は、クロロシランには際だって吸着性、反応性があるために、分離用カラムに強く吸着、反応してしまうことです。
通常は、このような性状の物を分析、分離する時は、分離カラムの吸着性能を無くすことが行われます。具体的にはクロモソルブChromosorbなどの珪藻土担体の表面シラノール、-Si-OHのOHを除去又は、他の化合物に誘導体化しますが、完全に除去することは困難です。
時には、不完全な状態のまま使用されることも多々あります。
クロロシラン類の混合物を定量する時に、更なる問題点は、共存する塩酸HClの存在です。
塩酸HClの吸着性は他のクロロシラン類に比べて異常に強く、上述の分離カラムを使用すると激しくTailing(検出Peakの形状がいつまで経ってもゼロ点に復帰しない)が発生します。
この共存する塩酸HClのTailing のために後続して溶出する他のクロロシランのPeakと重なって、定量性に多大な影響を与えてしまい、正確な定量が実行出来出来ません。
この問題は、古くて新しい問題であり、近年Packed Column(分離剤を充填したもの)から毛細管内面に液相をCoatingしたCapillary Column に移行が進んではいるものの、完全な解決は達成されておりません。
筆者は、この問題の解決に向けて取り組み、Packed Column について1種類、Capillary Columnについて1種類、塩酸HClの吸着が認められない分離カラムを見い出しました。
Capillary Column製造メーカーによっては全く好ましくないものが多く市販されていますので注意が必要です。
このGC分析例のチャートは、
Packed による分析例です。
このGC分析例のチャートは、
Capillary Column による分析例です。
詳細を知りたい方は、メールにてご連絡ください
2 金属不純物
半導体用シリコンの原料としては、TCSが最も使用されており、一方、薄膜用、Epitaixial膜成長用としては、DCSも使用されています。
金属不純物類は、半導体シリコンを合成する際に同伴、付随し単結晶シリコンウエハーの電気特性に大きな影響を及ぼします。
現在は、トリクロロシラン中の濃度は、2ppbw以下であることが要求されており、製造工程では精密な蒸留は勿論、出荷容器、バルブ、接続配管まで金属類の汚染を受けない様、管理が徹底されています。
TCS中の金属類の分析方法としては、沸点が32℃のため蒸発が容易であることからTCSを一度蒸発させ、残渣物を酸に溶解しICP-MSにて測定する方法が行われていました。
この方法の正確性を調べると、金属化合物の形態、特には塩素化合物の場合、TCSと同時に蒸発、損失してしまう欠点があります。
この対策として、金属類を捕捉する第三の化合物を添加し、蒸発、揮散を防止する方法がありますが、全ての金属類を同時に捕捉することが出来ないこと、ICP-MS側において第三の化合物による高濃度汚染を避けられず、ICP-MS側測定に支障を来してしまいます。
筆者は、ICP-MS、ICP-OESのプラズマに直接、TCSを導入する方法を開発しました。
この方法によれば、前処理は一切、不要のため分析作業に伴う汚染を受けることがありません。強いてデメリットを言えば、1回の測定終了後にICP-MSプラズマトーチに、SiO2の白い結晶が少量付着することです。
ブランク測定時の検出量が無視出来る場合は、そのまま測定しますが、問題になる場合は、トーチを取り外し、酸による溶解除去を行います。
TCSはArを容器内にてBubbling、溶解飽和させてICP-MSに導入しますが、DCSは容器から自圧で導入します。
DCSは空気中で発火、燃焼するため、液体、ガスで取り出すことは簡単では無く、多くの場合は、配管、バルブから少量が漏れ出し、火災事故、爆発事故の多くを引き起こしています。
そのため安全性確保の観点からも、本法の採用が強く、望まれていました。
この測定例は、DCS製品をICP-OESにて測定した例です。
標準試料は水溶液100ppbですが、実際のDCS重量当たりの濃度は、10ppt以下です。
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3-1 電気特性評価
古くは湿式化学分析を駆使して、電気特性に影響を与えるリン化合物、ボロン化合物(以下、Dopant元素)を分析定量する試みが行われて来ましたが、さすがにpptレベルにまでは到達しておりません。TCS合成直後の粗TCSなど、工程途中のリン化合物、ボロン化合物を評価する方法の定量下限は、10ppb~1ppbであり、何とか工程分析には使用されている様です。
精製TCS、DCSの評価は古くから、Poly-Silicon Rod ポリシリコン棒(多結晶シリコン棒)を作成し、その棒を帯域溶融装置により単結晶化させ、電気抵抗値を測定したり、PL(Photoluminessense)法によりP,B,As,Alの定量が一般に行われています。
このポリシリコン棒の作成は、実際にポリシリコンを製造する設備を真似て、評価、分析するために小型化した装置で行われます。
この方法の欠点は、長時間を要することです。概ね成長に30時間、単結晶化に5時間(加工、前処理を含む)、PL測定に2時間を所用します。再現性、正確性は、時に環境中から汚染を受けることが有るため、再分析を行うには再度、37時間が必要です。
筆者たちの経験によると測定件数のうち、5%程度の異常値が発生しますが、再測定により正しい値が得られています。
一方、Epitaxial 膜成長法によれば、膜成長速度が1μm/minであり、単結晶基板を使用すれば、そのまま単結晶が成長するため有利であり、環境からの汚染を受けることはありません。
30分間、成長させれば30μmの単結晶層が得られ、評価に供することが出来ます。
この実際の装置は、試料の大きさはPLの測定試料(10mm×5mm、厚さ400μm程度)のため、通常の実験台の上で膜成長を行うことが出来ます。
CVD温度は1100℃であり、ハロゲンランプ加熱にて短時間に昇温を行い、膜成長を行います。
1件、わずか30分で実施できることは、とても便利で効果的な方法です。
市販のランプ加熱装置の概略図
これは市販のランプ加熱装置の概略図です。
この装置を使用し、評価用のEpitaxial装置を作り上げます。
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3-2 超微量分析、容器内空間濃縮法
更なる微量不純物元素の形態を分析するため、DCSボンベ内の空間に濃縮されたガス相を採取しGC-FPD(炎光光度計)により分析すると、B2H5Clの化合物を検出することが出来ます。
これまでB2H6は知られていましたが、B2H5Clの存在を確認したのは初めてです。
気相濃縮部とは、DCS容器内に発生する空間部であり、
低沸点成分が、この場所に濃縮されています。
市販DCSには、不純物として、モノシランSiH4、B2H6,B2H5Cl,HCl,N2 等が含まれていますが、通常の分析条件では検出することは出来ません。
気相、空間部にに濃縮されたガス成分を取り出す方法は容易ではありませんが、工夫を施し採取し、GC側に注入します。
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4 TCS中有機物の定量
TCS中の有機物は、シリコンウエハを合成した際に、シリコン結晶中に取り込まれて、シリコンSiが炭素Cに置換された結晶を形成し、電気特性に多大な影響を与えます。
TCS製造工程では精密蒸留、有機物吸着剤による除去が行われているが完全な除去は達成されていません。
定量は、古くはGC-FID(水素炎イオン化検出器)により行われていたが、検出下限が高く、製造側の有機物低減化改善に対応することが出来ませんでした。
この時、TCSと有機物の分離に使用された分離Columnの液相は、シリコーンオイルとシリコーンオイルにフッ素を導入したオイルを混合、調製することにより全ての有機物との分離が可能になりました。
ここで言う有機物とは、一般有機物、メチルクロルシラン類(複数)です。
この分離技術を基本に、GC-MSによるSIM(選択イオン検出)を使用すると、10ppbwまで評価を行うことが出来ます。
分離Columnには、上述の液相のCapillary を使用します。
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